市ヶ谷見学会の報告
武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス・コワーキングスペース&市谷の杜・本と活字館
二回目の見学会は、10月28日(土)に酒井道夫先生を迎えて、新たな未来を切り拓く市ヶ谷キャンパス(武蔵美ホームページより転用)に集合しました。2019年に開設され今年フルオープンしたばかりの校舎です。おもにクリエイティブイノベーション学科の3、4年生が通い、地下にはフォトスタジオや多目的スペースなどがあります。校友会事務局も最上階の8階に吉祥寺校舎から移転してきました。今回お邪魔したのは、7階のコワーキングスペースです。キャンパス内にコワーキングスペースが開設されているのは、美術大学で初の試みだそうです。
この建物は、元ソニーミュージックエンターテイメントビル、通称“黒ビル”です。当時の音楽業界の勢いを知っている者にとっては興味津々。サイモン&ガーファンクルのレコードを持参して「このレコードのお陰でこのビルが建ったと言われている」と参加者の一人が力説してくれました。
耐震工事と内装改修を施され生まれ変わった空間には、お洒落な椅子が並びます。体幹が弱ってきた者には気合が必要だったり、齢84歳の酒井道夫先生が安全に座っていただくには、こっちのは背がないから危ないし、これは揺れる…と着席するのもひと騒動でした。全員無事に着席したところで、コワーキングスペース「Ma」の受付を担当している滝澤さんから、利用方法やロゴをはじめスペースコーディネートに多くの卒業生が携わっている話を伺いました。
次にインテリアデザイナーの渡辺光恵さん作成の市ヶ谷キャンパス資料を元にV字の耐震ブレース、考え尽くされた棚や改修工事で厄介な配線や床の段差などの工夫についてレクチャーをしてもらいました。真新しい空間の中で、私は鷹の台キャンパス8号館の四角い教室を懐かしく思い出していました。吹き抜けの廊下、作業机が並ぶ平和な教室、そしてコンクリート打ち放しの外観は竣工当時の最先端であり、私にとっては武蔵美で一番お世話になった愛おしい建物です。これから、ここ市ヶ谷キャンパスも多くの武蔵美生の活動の場となり、面白いアイデアが生み出されていくのかを想像するとワクワクしてきます。
1階の無印良品店およびMUJIカフェ、そして2階のギャラリーは、気軽に立ち寄れますので、ぜひ利用してみてください。
続いては、大日本印刷株式会社が運営する、大正期の分離派建築の社屋を復元した活版印刷と本づくりの展示施設、市谷の杜・本と活字館へ向かいます。大日本印刷株式会社と武蔵野美術大学と良品計画は、産学共創の取り組みをしているそうで、未来に向かっている感じがします。
館内に入り、パンフレットに沿って見学の見所を装丁家の近藤理恵さんに解説してもらいました。1階は活版印刷の各工程で使う機械が展示してあり、2階には企画展と、製本・ワークショップ工房、購買コーナーなどがあります。この日が最終日であった企画展示「宇野亞喜良 万華鏡印刷花絮展」は、現在の特殊加工印刷で華やかな絵を表現していてオススメとのことでした。
1階にある活版印刷体験ができるコーナーでは、期間限定で宇野氏のキュートな絵柄が印刷された栞が作ることができました。作業の説明を聞く人に混じって手順を見ていると、酒井先生がニコニコしながら「これウチの玄関に置いてある」と活版印刷機(てきん)を指差して言っていました。
そして、2階の購買コーナーに並べられている書籍の中に、印刷論の授業をご担当していた高岡重蔵先生の本を見つけました。タイポグラフィの本を手に取り、今さらながら素晴らしい先生に授業を受けていたんだなと思わずにはいられません。
穏やかな散策日和の中、気持ち良いテラスでコーヒーを飲みながらゆったりとした時間を過ごしました。テラスにあるDNPのロゴは、渡辺光恵さんの先生であるボー・リンネマン氏/コントラプンクト社 のデザインだそうです。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。皆様の近況報告などを聞き、それぞれが過ごした時間の長さと学生時代の懐かしさを感じながら、最新スポットを巡ることが出来ました。
『書を捨てよ、町に出よう』は寺山修司の著書ですが、高見堅志郎先生がよくおっしゃっていた言葉でもあります。そう言いながら鷹の台からイソイソと新宿のゴールデン街へとお出かけになっていました。これからもお元気な先生たちとお会いしたり、現役でものづくりをしている卒業生の話を聞いたりしながら『生デの会』であちこちへ出かけたいと思います。気が向いたらご一緒にいかがでしょうか。多くの卒業生のご参加を心よりお待ちしています。
【武蔵野美術大学】
【市谷の杜 本と活字館】