Then & Now生デの今昔

日本民藝館見学会・報告編

2022年10月30日、生デ思い出の地を巡る見学会がやっと実現できました。記念すべき第一弾は、日本民藝館です。生デの新入生オリエンテーション後の懇親会の代わりとして、ゴールデンウィーク前に日本民藝館、東京文学館、松濤美術館をクラスごとに見学するという行事がありました。自由参加で、確か土曜日の午後だったと思います。なので、午前中の授業に出て昼食を済ませて、鷹の台から都会の渋谷へと移動するのは、なかなかのハードスケジュールでした。私の在学中は、ひとクラス半分の20人ほど集まれば上々という感じでした。

この日集まった卒業生が民藝館の前で口々にしていた感想は、

「うん十年ぶり、学生の時以来」

「久しぶりで懐かしい」

「なんとなくしか覚えてないな…」

「民藝館、変わらなくていい」

「いいですよね、たまに来ています」

「学生の時、来たのかな?初めてかも」などなど。

民藝館は、当時と変わらず〈用の美〉の素晴らしさを教えてくれます。日々の生活の中で使われていた愛おしい道具たちを見ていると心が柔らかになっていく気がします。出入り口に展示されていた白磁の大壺は撮影可で、今どきのSNSを取り入れる懐の深さも感じました。

◉民藝館前での集合写真

続いて駒場公園へ向かいます。気持ち良い秋晴れの中、芝生の広場には子ども達の声が響いていました。園内にある東京文学館は日曜定休のため、以前は文学館の所蔵品を展示していた前田邸洋館のみの見学となりました。ゾロゾロと入っていくと、館の職員から声をかけられました。コロナ禍のため、集団での入館は避けてほしいとのことです。館内は広いので、何だかなと思いつつもご注意に従いながら、建物内を見学しました。次回は、東京文学館1階のカフェバーBUNDANで閲覧可能な二万冊の書籍に囲まれながらコーヒーをいただきたいものです。

◉前田邸前での集合写真

静かな高級住宅街を抜けると、松濤美術館はすごい人だかりでした。後で知ったのですが、この日はハロウィーンと展覧会の最終日とが重なったせいか開館以来の最多入場者数だったそうです。『装いの力―異性装の日本史』男らしさ、女らしさとは何なのかというテーマでした。大井海岸芸者の栄太朗さんも来館していて、艶やかな着物姿の装いが展覧会に花を添えていました。館内は酸欠になりそうなほどの人でした。それも若者ばかり。噴水が見える吹き抜けの通路でほっと一息。展示内容もさるもののいつもと違う松濤美術館に出会えて面白かったです。

◉松濤美術館展覧会看板

ともあれ、この行程を何年にも渡り歩いていた生デの先生たちのタフさを改めて思い知りました。今日はたった十数人でしたが、おしゃべりしながら歩いていると列は離れ離れとなり、先頭を行く私は時計ばかり気にしていました。集団行動が苦手な十代の美大生を引率するのは、さぞかし骨が折れたことだろうと今更ながらですが頭が下がります。まぁ途中で数人いなくなってもお構いなしといった大胆さが長続きのコツだったのかもしれません。

初の試みの見学会に参加してくださった皆様ありがとうございました。そして情報が届かなかった方々ごめんなさい。主催者としては、告知方法にもっと工夫をしなければと大いに反省しています。さてさて、懐かしいあの頃を求めて次はどこへ行きましょうか。コロナ禍で中止されている武蔵美の更生施設の一つ、古美研で宿泊した奈良寮の利用再開が待ち遠しいです。

※駒場東大前駅から日本民藝館→東京文学館→松濤美術館の順路や写真は、日本民藝館・下見編に紹介してあります。お時間ありましたら、そちらも合わせてご覧ください。

◉民藝館白磁の大壺と私(田村陽子)のツーショット