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能の主役のことをシテという。美しい衣装と面(おもて)を着け、舞を舞う。神や精霊、亡霊、鬼など、この世の者ではない役柄が多い。そのシテと応対しその演技を引出す役をワキと呼ぶ。ワキはすべて現実に生きている成人男子で、面を着けることはない。僧や神官、天皇の臣下などの役が多い。ただしシテでも面を着けない場合もあり、これを直面(ひためん)という。
シテの所作や舞の見どころを抜き出して紋付・袴姿で舞う上演形式。囃子は入らず4人前後の地謡(じうたい)だけで舞う。仕舞扇という大きめの扇を使い、面や装束は着けない。小道具なども原則的には用いず、簡素化されているため、舞の骨格を鑑賞するには最適。
能の音楽は謡と囃子で成り立ち、謡とは能の舞いに添えられる歌謡のこと。シテ方・ワキ方などの立ち役が務める一人称の謡(台詞や歌=節)で舞台は進行し、笛、鼓、太鼓などの囃子は囃子方により演奏される。地謡が合唱によって風景や情況の描写、心情を朗唱する。囃子を入れずに謡うことを「素謡(すうたい)」という。
ここではシテ方宝生流のこと。シテ方五流派のひとつ。宝生流は重厚堅実な芸風で、技巧を凝らした謡の魅力から「謡宝生」とも称される。他に観世、金春、喜多、金剛の各流派がある。一方、シテの相手役であるワキ方には三流派がある。こちらにも宝生流があり、下掛(しもがかり)宝生流とよぶ。シテ方流派の能楽師はシテのみ、ワキ方流派の能楽師はワキのみを勤め、入れ替わることはない。